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​アマビエさん、災難な1日。

自宅の水槽から次の水槽へと潜り登校すると、いつもようにYOKAIたちが集まってきた。

「アマビエちゃん!自画像カードちょうだい!」

「わたしにも!」

「オレにも!」

心優しいアマビエさんは、嫌な顔ひとつせず、一列に並んでくださいと言うと、早速自画像を手持ちのカードにささっと描き、一人ずつに配りはじた。

順調に筆を走らせていたが、半分ほど配り終わるとアマビエさんの表情が少し曇る。

筆ペンの出が悪くなってきたようだ。

最後まで持つのか心配になりながら、少し描く速度を早める。

しかし、YOKAIたちはそんなことはお構いなしに、それよりも早いペースで新たに列に並でいく。

「あのぉ、もしかしたらインクが切れて、全員分差し上げられないかもしれません。だから今並んでも。。。(小声になっていく)」

普段断らない彼女もさすがに心配になり、そう伝えた。

「また明日も配りますからぁ。」

しかし、YOKAIたちは一切引き下がらない。

慌てながらも、どんどん筆を進めるアマビエさん。

 

その時は急に訪れた。

「ひゃっ」

運悪く、まだ描いている途中だった。

アマビエさんの顔が急にこわばる。

このまま未完成で終わると、通常は幸運を運び、厄災を遠ざけてくれるはずのカードが、逆に小さなアンラッキーとちょっとした災難を運んできてしまうことは一般には知られていない。

『どうしよう、このままだとこの人に。。。』

 

すぐに代わりのペンを探し、絵を完成しなければ。

慌てて、替えのペンを探すが、見当たらない。

『え?なんで?替えがない!』

こんな時に限って替えの筆ペンを持ってきていなかった。

「アマビエちゃん、どうしたの?ペンが出なくなったのなら、私の貸そうか?」

完成を楽しみに待っていた最前線のYOKAI<A>が声をかけてきた。

「あ、うん・・・」

「ありがとうございます。でも私、使い慣れたペンじゃないと上手く描けないんです。」

そうやんわり断るが、ペンの替えを持っていないことに変わりはない。

「大丈夫、私そんなに気にしないから少しくらい普段と違っても大丈夫だよ。」

「ごめんなさい、それだと私が気になってしまうので。」

なんとか取り繕おうとするが、アマビエさんの表情はどんどん強張っていく。

『どうしよう。このままではこのYOKAI<A>さんにアンラッキーなことが。』

顔色がどんどん悪くなるアマビエさんを見て、さすがに周りのYOKAIたちが異変を感じ始めた。

 

「痛っつ!」

不意に、自画像カードが完成するのを待っていたYOKAI<A>の頭に紙飛行機が命中した。

「わりぃわりぃ、変な方向に飛んでちまった。」

クラスメイトのYOKAI<B>がレポート用紙で紙飛行機を飛ばして遊んでいたものが、YOKAI<A>に命中したのだ。

『え?まさか!!』

よくありそうな光景だが、今のアマビエさんには全てが自分の未完成カードのせいのように感じてしまう。

「反対方向に投げたつもりだったんだけど、なんかそっちに行っちまってよ。」

そう言いながらYOKAI<B>が紙飛行機を拾いに近づくと、突然YOKAI<B>が足を滑らせ、勢い余ってYOKAI<A>の足を踏んでしまった。

「キャッ!!いったぁい!!!何すんのよ!!!!」

甲高く短い悲鳴の後すぐに怒号が響く。

「いや、急になんかに引っかかって、バランス崩したんだよ。わざとじゃねーんだって。わりぃな。」

「はぁ、何もないのに引っかかるわけないでしょう!」

「俺がウソついてるっていうのかよ!」

「ちょっと待ってください!」

二人のやりとりがエスカレートする中、アマビエさんが割って入ってきた。

連続してYOKAI<A>に起こったことを見て、確信したアマビエさんが、これ以上YOKAI<A>とその周りにアンラッキーが起こらないように、

「実は・・・」と自身のカードが未完成だとどうなるかを打ち明けた。

 

「そういうわけで、YOKAI<A>さんに起こったアンラッキーは私のせいなんです。ごめんなさい!」

アマビエさんが話し終わると、不気味なほどの静けさが教室を襲う。

「じゃあ、私、この後もアンラッキーなことがおこるの!?それっていつまで続くの!!」

YOKAI<A>が恐怖と怒り混じりに静寂を打ちぶると、今まで我先にカード欲しさに集まっていた群衆は恐怖に駆られ、騒然となった。

必死に落ち着かせようとアマビエさんが声をかけるが、すぐにその場を離れるもの、自分がもらったカードは完成品なのかと詰め寄るものなど、教室はまさにカオスと化した。

 

「雪乃精さぁ、あいつらの頭冷やして。」

ぼそっと一言いうと、どこからともなく、急に騒ぐYOKAIたちに向かって吹雪が吹きつけ、YOKAIたちは一瞬で凍り立いたように静まり返った。

「あんたらさ、今まで散々人様に自画像描かせて幸運もらって、ちょっとアンラッキーが続いたからって今度は寄ってたかりやがって。」

そういうと、彼女は「もういいよ」というと、吹雪はやみ、全員が落ち着きを取り戻した。

 

「そうだよね。ごめんねアマビエちゃん。」

「私こそ、黙っててごめんなさい。」

「ねぇねぇ、その筆ぺんってどこにあるの?すぐに替えを持って来れないの?」

YOKAI<A>はアマビエに謝りながら、尋ねた。

「自宅に戻ればあるのですが。」

「じゃあ今すぐ戻れない?」

「そうしたいのですが、実は先ほどの吹雪で近くの水槽の水が凍ってしまって、すぐに移動できないかもしれないのです。」

一斉に視線が先ほど吹雪を吹かせた彼女に向く。

「じゃあどうすれば。」

不安そうにYOKAI<A>がいうと、

「水槽の水を交換していただくか、私が今入っている水槽ごと移動していただくか、ですかね。」

「と言うより、両方かもしれません。」

アマビエさんが指差す方向を見ると、これもアンラッキーの効果なのか、アマビエさんの足元の水も凍っているようだ。

「これでは、そもそも私が水槽に潜れないのです。」

「よし、じゃあみんなで学校中の水槽の水を交換しよう!」

YOKAI<B>が威勢よく提案した。

「全部!?」「そんなの何個あると思ってるんだよ!」

「みんなでやりゃぁすぐだろ!」

「それはそうだけど。」

「さっきアイツにも言われただろ、いつも俺たちがアマビエにお願いばっかで、アマビエのこと考えてなかっただろ。」

そうYOKAI<B>が言うと、「そうだそうだ」と声が上がった。

「そうと決まれば、すぐやろうぜ!」

こうしてYOKAI<A>に降りかかるアンラッキーを(自分に影響が及ぶのを)心配しながらも、YOKAIたちは二手に分かれ【水槽の水を変えろ大作戦】を開始した。

足の速さと力持ちグループは校舎に散らばり、各所の水槽の水の交換に走った。

一方アマビエさんが入っている水槽は水を交換することができないため、氷を溶かす必要があり、火を扱えるYOKAIが火力を調整しながらアマビエさんの足元を温め始めた。

同時に、急激にガラスを暖めると、ガラスが割れたり、変形する可能性を考慮し、最悪の場合を考え、瞬間的に冷気を出せるYOKAIがそばで緊張しながら待機していた。

こうして、同時に行われた【水槽の水を変えろ大作戦】は着々と進み、凍ってしまった水槽は全て入れ替えられ、残すはアマビエさんの足元の水槽のみとなった。

YOKAI<A>は、自分に降りかかるアンラッキーが他者にも影響しないように、隅で大人しくしていたが、不意に「きゃっ」や「イタッ」などの声が聞こえてきた。

 

しばらくして、校舎中の水槽の入れ替えが終わり、アマビエさんの足元の氷が全て溶けたところで、アマビエさんが潜れるように再度凍らない程度に冷気を掛け、水を冷やした。

「みなさん、ありがとうございます!これで潜れます!」

「YOKAI<A>さん!もう少し待っててください!すぐに戻りますから!」

そういうと、アマビエさんは勢いよく、水槽の中に飛び込む。

教室は時計の針と時折YOKAI<A>の悲鳴のような声以外はなく、YOKAI<A>に降りかかるアンラッキーは、段々と間隔が早くなり、時には今まで以上に大きいな声を上げるようなことが増えてきた。

 

「お待たせしました!!」

勢いよく水槽から飛び出してきたアマビエさんが、半分宙に浮きながら、叫んだ。

「YOKAI<A>さん、カードをください!」

YOKAI<A>からカードを受け取ってみると、描かれた自分の顔が妖しく不気味な表情に変わっているように見えた。

その状態から、再度表情を修正し、未完成部分をさささと描きあげると、

ふぅと大きく息をつき、

「YOKAI<A>さん、私の自画像カードです。あなたに幸多からんことを。」

いつもの言葉と共に、自画像カードをそっと差し出す。

YOKAI<A>がそれを受け取った瞬間、

「みんな何してるんだ?テスト返すから、早く席につけ~。YOKAI<A>、おめでとう満点だ。」

と言いながら、先生が教室に入ってきた。

 

今日もYOKAI ACADEMYの授業が始まる。

ストーリーを読んでいただきありがとうございます!

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